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評価:
はるな 愛
講談社
¥ 1,365
(2009-03-11)
Amazonランキング:
132604位
Amazonおすすめ度:
すばらしい
泣けました
等身大のはるな愛さんの本です
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昨年エアあややがブレイクして今やテレビで見ない日はない位に忙しくなったニューハーフ、はるな愛さんの波乱万丈の半生を綴った自伝です。地元関西ではけっこう昔からかわいいニューハーフとして有名で馴染み深い方ですが、本作は、フジテレビの「印税スター!誕生」という番組の企画で、芋洗坂係長の「
みならい天使のさんたろう」や、大沢あかねさんの「
母ひとり、娘(こ)ひとり」と一緒に出版までこぎつけたそうです。
私はその番組は残念ながら見ていなかったのですが、他のバラエティやドキュメントなどを見て気になっていましたので予約購入したものですが、予想以上に濃い内容でした(^^;
まず、共働きで忙しい両親に連れられ、親戚のおばさんがストリッパーとして働くストリップ劇場に3歳ぐらいの頃から預けられ、そこできれいなお姉さん達のハダカやキラキラの衣装、甘い香水の香りや歌って踊る姿に憧れた時代。
そのお姉さん達と自分との決定的な違い・・・自分も女の子だと信じ、「おちんちん」は大人のオンナになればいずれなくなって、お姉さん達みたいなきれいな体になると信じていた時代でもあるみたいです。
しかし、幼稚園のある夏のプールの日。女の子達だけが別の教室に呼ばれ、自分もいつものように一緒に着替えようとして「賢示くんはこっちに来たらあかんよ」といわれてショックを受け、小学校に上がる頃には、当たり前のように好きな赤色のランドセルではなく黒のランドセルを買われて、6年間も黒のランドセルを背負って学校に行かなければならないことに嘆き、小学校にあがれば、上履きの色や体操服のブルマや短パンが違い、整列するときも、男の子のグループに入れられ、身体測定では仲の良い女の子達と別れて男の子達と同じ教室で身長や体重を量る違和感。挙句、保健体育の授業で子供の生まれるメカニズムを知り決定的に男と女の違いという現実を知る。
私などは、当たり前に自分を男の子だと思って生きてきましたので、それらの疑問すら思いつきもしませんでした。男女平等の時代なのか、セクハラなのか、最近ではブルマはさすがに見なくなりましたが、学ランとセーラー服はまだまだ健在。そのうち一部の学校のようにどこも男女共通のブレザーとかになるのでしょうか。
話はそれましたが、そんな心は女の子で体は男の子の「大西賢示」少年。歌って踊れるアイドルを目指し小学生時代から「ちびっ子のど自慢」など様々なイベントにも出演。ステージで歌っているときには女形よろしく、メイクしても怒られないのがうれしかったそう。
しかし、中学校になれば、オンナっぽい「ちょっと変わった不思議ちゃん」も、「気持ち悪い奴」「テレビに出ている生意気な奴」として、いじめのターゲットに。イスに画鋲を置かれたり、かばんがごみ箱の中に入れられたり、殴る、蹴る、ライン引きの石灰を口の中一杯に詰め込まれたり、掃除用具入れに閉じ込められてころがされたり・・・もうこれ以上耐えられないと、担任の先生に助けを求めると
「大西くん、あなたにも悪いところがあるんじゃないの?自分から積極的に輪に入って、仲良くしていきなさい」
という信じられない言葉だったり。
そして、そのいじめから逃れるために入った不良グループでは、見返り要求も段々とエスカレートしていき、いじめもなくならず、どうしようもない深く暗い闇の中へ。又、家庭では、両親が始めた鉄板焼屋が繁盛し、貧乏で借金取りから逃れていたような生活から一転したかわりに、父は店のことは母親任せでギャンブルや遊びに明け暮れ、浮気までする始末。
仕事で忙しい上に父の浮気の事で悩んでいる母をこれ以上悲しませるわけにもいかず、かといって13歳の少年が自分で解決できる限度を超えて・・・性の苦しみともあいまって、中学生の大西少年が毎日自殺することを考えていたとしてもおかしくないでしょう。
しかし、深く、暗いトンネルであっても、出口のないトンネルはない。中学2年の終わりに、ショーパブ「ドリームパブ」のニューハーフ、アキさんとの出会いが運命を変えます。14歳でニューハーフの道に足を突っ込み、ようやく自分の居場所を見つけます。
その後もカミングアウトや恋愛、失恋、裏切り、性転換手術など様々な紆余曲折が綴られ、数千万円の貯金があったセレブな生活から、再度アイドル目指してからの月給500円でサラ金通いの極貧下積み時代などまさに波乱万丈の半生。
そんな、はるな愛さん。カミングアウト以降、息子「賢示」が娘「愛」となったことを認めきれず、無視され続けていた母親がはじめて娘「愛」と認めてくれたあと、肩肘張って生きてきたことから開放されたのか、「
ありのままの私」として肩の力を抜いた生き方に変わります。そうすると、閑古鳥が鳴いていたような自分の店にもお客さんが入ってこられるようになります。
しかし、運命のいたずらか、今度は喉にポリープが。声が出なくなり、歌も歌えず、お店の営業も出来なくなります。かといって、生活に余裕がないため店を閉める訳にもいかず、3ヶ月ほど身振り手振りでの営業。そんなときに生まれたのが口パク、顔まねでの「エアあやや」。歌だけでなく、MCなどにもあてぶりをはじめ、声が出だしてもそのまま芸として評判に。その後の活躍ぶりはご存知の通り。今は、かねてからの念願だったCDデビューも果たしと、今では順風満帆。
又、テレビに頻繁に出るようになり、ある番組では、母親のこれまでの思いを綴った手紙をもらったり、他の番組では、酒と暴力とギャンブルとオンナという典型的な悪い父親像で大嫌いだったという父親ともある番組で再会し、キャッチボールしながら和解できたりと、まさに、人生に無駄な出来事はないんだよという見本のような話。(このあたりが最後の方に出てきて思わず目頭が熱くなってきます)
そんなはるな愛さんが、最後にこう言っておられます。
生きてて良かった。これがいま、この本を書き終えた私の正直な気持ちです。
この本を書くために自分の人生をふり返ってみると、本当に苦労の連続でした。
でも、私の人生には、この本に書いたどんな苦労も欠けてはダメだったと思います。
いろんな苦しみが、いまの私をつくってくれました。
大変な困難を経験したからこそ、小さな喜びや普通の幸せを何倍にも大きく感じることができます。
最近感じることは、苦労が多い人ほど、笑顔の数も多いような気がします。
おバカキャラでいつも笑顔の上地雄輔さんも、この
上地雄輔フォト&エッセイ『 上 地 雄 輔 物 語 』のとおり、悲しみや苦しみを乗り越えて今のあの屈託のない笑顔があるんだと思います。
そして、そんな人たちに共通している言葉があります。
それは
「ありがとう」
です。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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